「そもそも、設問にどう応えればよいのか?」
中小企業診断士二次試験では、知識や計算力だけでなく、設問文を正確に読み解く力が合否を分けます。設問の意図を取り違えると、論点やキーワードを拾い漏らし、いくら文章を頑張って書いても評価が低くなります。
では、「設問の意図」とは何でしょうか?
端的に言うと、『何を答えさせようとしているのか』『なぜその質問をしているのか』です。
これを理解することで、設問が解答を自然に導いてくれることに気づきます。すると、解答の構造が見え、的確にキーワードを拾い、効率よく設問に応えることができるのです。
本記事では、受験生向けに「設問解釈」の具体的な手順とコツを、ブログ調でわかりやすく整理しました。
1.中小企業診断士二次試験の設問解釈とは?独学で一発合格するための基本
設問解釈とは、設問文を読んで解答の方向性の仮説を立てる作業です。
単に文章を読むのではなく、「制約条件」「主語」「目的」「問いの意図」を整理し、どの切り口で解答するかを決めます。
ポイントは以下の2点です。
- 設問文を読んで、解答の制約条件を確認する
- 設問文を読んで、与件から情報を拾う準備をする
この2点を意識するだけで、答案の方向性がブレにくくなります。
2. 解答プロセスにおける設問解釈の位置
二次試験の解答プロセスは概ね以下の流れです。
- 設問解釈
- 与件文からキーワードを拾う
- キーワードから解答文章を作成する
設問解釈は、この流れの最初に位置します。ここでしっかり方向性をつかめば、後の文章作成が格段にスムーズになります。
3. 解答の制約条件を確認する
解答を制約する条件は、設問文に必ず含まれています。
この条件を無視すると、大きな外しをするリスクがあります。
主な制約条件の例
| 制約タイプ | 例 | ポイント |
|---|---|---|
| 数の制約 | 「〇〇を2つ述べよ」 | 切り口の数が限定されている |
| 切り口の制約 | 「強みと弱みを述べよ」 | 切り口が明示されている |
| 時間の制約 | 「〇〇以前の成長要因は?」 | 過去・現在・未来のどの視点かを意識 |
| 観点の制約 | 「〇〇の観点で」「〇〇について」 | 視点を間違えない |
| 除外の制約 | 「〇〇以外で」 | 「〇〇以外」とある場合は対象の対となる切り口を考える |
例:
「利益率を上げる方法を売上の拡大以外で述べよ」
→ 切り口は「費用改善」、材料費や人件費などに細分化可能です。
制約条件は解答の切り口のヒントになりますので、設問を読んだら最優先で確認しましょう。
4. 解答の切り口を作成する
設問解釈のアウトプットは「解答の切り口」です。
これは、与件文から拾ったキーワードを入れるための枠と考えてください。
解答の切り口のイメージ
| 制約条件・切り口 | 行動 | 影響 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 論点1 | |||
| 論点2 | |||
| 論点3 |
すべての設問で切り口を作成したら、与件文を読んでキーワードを埋めます。
例:
| 制約条件・切り口 | 行動 | 影響 | 結果(収益性UP) |
|---|---|---|---|
| Q | 製品ニーズをもとに企画、製造 | 顧客ニーズに対応 | 高付加価値製品の販売 |
| C | 生産計画の頻度を増やす | 需要予測精度を高める | 原材料費の削減 |
| D | 設備の洗浄作業の標準化 | 生産リードタイムの短縮 | 人件費の削減 |
このように整理すれば、キーワードの拾い漏れが減り、文章作成もスムーズになります。
5. 論理展開の型を使って整理する
「解答の切り口」を横方向に整理するには、論理展開の型を使います。
論理展開の型
| 型 | 書き方 | 用途 |
|---|---|---|
| パターンA | (切り口)は、〇〇、〇〇である。 | 列挙系、情報整理型 |
| パターンB | (根拠)のため、(結論)と考えられる。 | 評価・考察型 |
| パターンC | (行動)による(影響)により、(目的・結果)を図る | 提案・効果分析型 |
多くの場合、パターンCを基準に切り口を作っておくと、どの設問にも応用可能です。
6. 解答の切り口を作成・修正するタイミング
切り口は設問文を読んだ段階で仮決めします。
完璧を求めず、与件文を読みながら修正できる前提でOKです。
修正タイミングは以下です。
- 設問文を分解して仮決めする
- 他設問との関連を意識して洗練する
- 余ったキーワードから修正する
7. 設問間の関連を意識して切り口を洗練する
設問単体では切り口が定まらないことがあります。
特にSWOT分析など複数設問で関連する場合は、後の設問を見据えて修正します。
例:
- 強み → 戦略や課題解決の材料
- 弱み → 個別課題の整理
- 機会 → ターゲットや市場拡大のヒント
- 脅威 → 経営戦略転換の背景
- 課題 → 解決の根拠や優先順位
8. キーワードから切り口を修正する
与件文からキーワードを拾うと、初期の切り口が不十分な場合があります。
その場合、キーワードをヒントに切り口を修正しましょう。
例:
設問:
「C社の収益性を高めるには、Y社との新規取引以外で提案せよ(140字以内)」
初期切り口:
| 行動 | 影響 | 結果 |
|---|---|---|
| 売上増 | ||
| 費用減 |
与件文に「原材料費・人件費が大きい」とあれば、結果を「QCD」に修正:
| 行動(提案) | 影響 | 結果(QCD) |
|---|---|---|
| 製品企画・製造 | 顧客ニーズ対応 | 高付加価値製品販売 |
| 生産計画頻度増加 | 需要予測精度向上 | 原材料費削減 |
| 設備洗浄作業標準化 | 生産リードタイム短縮 | 人件費削減 |
これで、文章作成時に自然と論理が通ります。
9. 設問解釈の効率化のコツ
- 完璧を求めない
仮説段階での解釈で十分。与件文を読むうちに修正可能です。 - 過剰なメモは不要
最低限の記号や線で十分。目立たせて見落とし防止にする程度でOK。
10.【具体解説】2024年度事例Ⅲを答案フレームで読む
ここでは、先に示した「普遍的な答案フレーム解説」の最後に、2024年度(令和6年度)事例Ⅲを題材に、実際にどのように答案フレームを当てはめて読むか/書くか を、ステップを追って詳細に示します。
この具体例を通じて、「フレーム→与件対応→答案化」の流れを体感してもらうことが目的です。
9.1 2024年度事例Ⅲの題材と特色(概要のおさらい)
まず、今回の事例Ⅲの特徴を押さえておきましょう。
- テーマは「受注機会の増加を成長に結びつけるための現状改善」
- 工場は搬送機器メーカーで、設計~加工~組立を自社内で処理する体制を持つ一方、受注急増への対応が追いつかず、工程管理の混乱、週次計画の変更頻度、作業者間のばらつき、見積・価格交渉の制度未整備などが課題となっていました。
- 特に与件文中には、「製造部が製造番号別に大日程計画を作成し、週次計画は課長の経験ベース」「設計変更・納期変更が計画を揺さぶる」「IT利用を検討中だが本格導入には至っていない」といった記述が多数あります。
- 総評でも、「回答要素をどの設問で使うか迷う設計」「与件から根拠を取って論理を立てる力が問われた」点が難易度の鍵とされています。
この題材特性を踏まえたうえで、以下に各設問(第1問~第5問)をフレームに当てはめながら論点整理と答案骨子の構成を詳述します。
9.2 各設問へのフレーム当てはめと答案骨子
以下、各設問に対して、
- 設問要求の確認
- 用いる型・フレーム選定
- 与件から使えるキー・要素抽出
- 骨子(答案フレーム)例
- 注意点・差別化ポイント
を順に示します。
第1問:強み抽出
設問要求(例)
「C社の強みを80字以内で述べよ」
1. 型・フレーム選定
- 型:列挙型(パターンA:「~は、①…、②…」型)
- フレーム:切り口を複数軸で取る(技術軸、体制軸、顧客軸、対応軸など)
2. 与件から使える要素抽出
与件文から、以下の強み要素が取れます:
- 設計提案力・提案型搬送ノウハウ → 顧客工場を視察・生産性を改善提案できる経験
- 内製化体制(フレーム・搬送・駆動部の加工) → 部材選定・加工一括制御
- 複数取引先との基盤(X社依存度) → 顧客基盤と実績
- 納入後メンテナンス対応力(X社案件) → アフターサービス対応範囲
これらを80字以内に凝縮して列挙する。
3. 骨子例(80字前後)
強みは、①顧客視点で生産性改善提案できる設計力、②搬送構造・駆動部を内製処理できる体制、③X社案件含む安定受注基盤、④納入後メンテ対応可能な信頼性である。
(字数調整あり:例えば④を省略して3つに絞る等)
4. 差別化ポイント・注意点
- 「X社依存」の強みを使うと同時に「依存リスク」につながるので、本問では強みとして肯定的に扱う
- 切り口を4つ以上にして語感を豊かにできれば印象アップ
- 言葉を揃える(例:「〜力」「〜体制」などの語尾)
第2問:工程改善(生産能力向上)
設問要求(例)
「受注量の増加傾向に対応するため、どのように工程改善を進めるべきかを100字以内で助言せよ」
1. 型・フレーム選定
- 型:現状→方向性→施策型(改善提案型)
- フレーム:現状課題 → 優先施策 → 手順 → 効果
2. 与件から使える要素
与件文から、以下の材料が拾えます:
- 製缶工程が残業・休日出勤でキャパ不足 → ボトルネック工程
- 加工工程や組立工程が平準化されておらず、応援体制なし
- 週次計画~実績調整が頻繁で混乱
- 各工程工数見積が課長経験ベース → 見積のばらつき
- IT導入検討中との記述 → 情報共有改善余地
3. 骨子例(100字前後)
製缶工程を重点にボトルネック解消を図る。まず作業分析とムダ削減、次に工程標準化・平準化を推進し、応援体制を構築する。計画と実績データを活用しつつ順次実行する。
4. 差別化ポイント・注意
- 「順序付け(優先順)」を入れると論理性が増す
- 応援体制を「多能工」や「前後工程応援」で具体化
- IT導入を仄めかす表現で未来性を添える
第3問:工程管理改善(管理体制)
設問要求(例)
「工程管理業務の混乱を防ぐためにはどのように改善すべきか、その進め方を100字以内で助言せよ」
1. 型・フレーム選定
- 型:原因→対策→効果型(B または現状→対策型混用)
- フレーム:課題原因 → 対応ステップ → 効果
2. 与件から使える要素
- 計画変更が頻発 → 工程管理の混乱
- 生産会議に設計担当者が参加 → 調整体制の断片的利用
- デジタル化未導入 → 情報が紙中心、遅延発生
- 見積基準が経験ベース → 信頼性低下
3. 骨子例(100字前後)
工程管理に混乱が生じているため、まず計画変更履歴を可視化し、統合管理体制を構築する。次に、リアルタイム進捗把握基盤を導入し、生産会議で迅速調整できる体制へ改革する。
4. 差別化ポイント・注意
- 「統合管理体制」「可視化」「迅速調整」などキーワードは採点者に響く
- 計画変更履歴を使うという提案は、「事実+対応」の因果をつなぐ構成
- 生産会議構造を改善する観点も入れておくと高評価
第4問:価格交渉の事前対策
設問要求(例)
「材料費・人件費高騰に対処し、顧客との価格交渉を円滑にする社内事前対策を120字以内で助言せよ」
1. 型・フレーム選定
- 型:根拠→結論型(パターンB) または 対応策→効果型
- フレーム:課題整理 → 原価精査 → 交渉準備 → 効果
2. 与件から使える要素
- 見積は過去契約金額参照 → 実コスト反映不足
- 部品構成表はデジタルデータ化されている → 原価把握基盤あり
- 営業が見積作成→最終決裁 → 社内調整力に課題
3. 骨子例(120字前後)
過去契約額依拠の見積方式を見直し、部品構成表を基に材料・加工原価を精算する。設計変更リスクも加味し、価格交渉資料を整備。営業に交渉スキル研修を行い、原価論理と付加価値訴求を併用する体制を構築する。
4. 差別化ポイント・注意
- 「部品構成表を使って原価精算」など、与件由来の強みを使う
- 「設計変更リスク」を先読みして加味する提案を入れる
- 「営業研修」や「交渉資料整備」は具体性があり信頼感を与える
第5問:新規事業展開推進
設問要求(例)
「社長が考える小規模施設向けの新規事業構想を、どのように推進すべきかを120字以内で助言せよ」
1. 型・フレーム選定
- 型:現状→戦略→施策→効果型
- フレーム:現状課題 → ターゲット明確化 → 実行戦略 → 効果
2. 与件から使える要素
- 取引先が数社で集中 → 分散先開拓ニーズ
- 社長の設備更新構想あり → 設計力+提案力を活用
- 搬送機器一貫体制 → 加工~据付対応力
3. 骨子例(120字前後)
ターゲット市場のニーズ分析から始め、標準搬送モジュール設計を提案。営業・設計連携でプロトタイプを作成・展示化し、既存顧客チャネルとイベント・WEBで認知拡大。工場更新計画と連動させて拡販を図る。
4. 差別化ポイント・注意
- 調査(ニーズ把握)という原点を入れると説得力向上
- 標準搬送モジュールの提案は汎用性を示す
- 拡販ルート(展示・WEB・既存チャネル等)を複数提示
9.3 フレーム適用時の総合流れ(設問横断対応)
5問通して答案を一本化する意識も重要です。設問間の論理整合性を意識しながら、次のような流れを描けると良いでしょう。
第1問:強みを列挙 → 第2問:強みを生かした工程改善 → 第3問:管理体制整備 → 第4問:原価精度向上/交渉準備 → 第5問:新事業展開
つまり、一つのストーリーを通じて、「C社が強みを使って改善し、将来を拡張する」という整合性ある構成を答案全体で描くことを意識します。
また、局所最適ではなく全体最適を意識して整合性を保つことが、採点者に「一貫して論理的」と評価される鍵となります。
9.4 実際の答案化で意識すべき表現・詳細化ポイント
- 各文節を短めに。因果が途切れないように接続詞を使う(「ため」「ので」「により」等)
- 用語統一:同じ意味を指す語句は繰り返しすぎない
- 提案は「順序感」を持たせて書く(優先順位、ステップ)
- 効果・目的を必ず盛り込む
- 与件にない極端な施策は避けるが、ヒントがある方向には示唆的な表現を使う
このように、2024年度事例Ⅲを解答フレームに沿って読むと、設問ごとに骨子を立てやすくなり、論理構成の整った答案が書けます。あなたもまず、「型+フレーム」の組み合わせを意識しながら、過去問をこの方法で解き進めてみてください。
採点者に「ロジックが明快」と感じさせることができます。
11. まとめ
設問解釈のポイントは以下です。
制約条件のパターン
- 数の制約:「〇〇を2つ述べよ」
- 切り口の制約:「強みと弱みを述べよ」
- 時間の制約:「〇〇以前の成長要因は?」
- 観点の制約:「〇〇の観点で」「〇〇について」
- 除外の制約:「〇〇以外で」
論理展開の型
- パターンA:(切り口)は、〇〇、〇〇である。
- パターンB:(根拠)のため、(結論)と考えられる。
- パターンC:(行動)による(影響)により、(目的・結果)を図る
解答の切り口作成・修正
- 設問文を分解して仮決め
- 設問間の関連から洗練
- 余ったキーワードをヒントに修正
解答作成の際のチェック
- 問われている論点を網羅
- 解答の対象を意識
- 時系列を意識
- 設問のレベル感を意識
設問解釈を正しく行うことで、解答文章が自然と論理的に整い、採点者に伝わる答案が作れます。
まずは、設問文の主語・目的・制約条件を意識して、仮説を立てるところから始めてみましょう。

コメント