1.予測の総論
中小企業診断士の過去5年間(2020~2024年)の事例Ⅲを分析すると、生産効率化・品質向上と技術力を活かした高付加価値化が一貫したテーマであり、毎年異なる業種で時事性の高い生産・技術課題が問われています。2025年の製造業環境では、「2025年の崖」によるレガシーシステム刷新の限界、製造業DX推進(IoT・AI活用によるスマート工場化)、カーボンニュートラル対応(工場・事業場の脱炭素化)、サプライチェーン効率化とセキュリティ強化、深刻な人手不足への対応といった顕著なトレンドがあります。
政府は「省力化投資促進プラン」で2025~2029年を省力化投資集中期間と位置づけ、ものづくり補助金やIT導入補助金を拡充しています。中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025では、サプライチェーン全体のデジタル連携が強調されています。また、製造業カーボンニュートラル展が2025年に大きな注目を集め、脱炭素は「環境対応」から「経営そのもの」として捉え直されています。
これらを踏まえ、2025年度事例IIIでは以下の3テーマを予測します:
- 精密部品加工業のスマート工場化とIoT活用
- 食品製造業のサプライチェーン効率化と脱炭素対応
- 金属加工業の技能伝承とAI品質管理
いずれも2025年特有の時事性と最新生産技術を反映した内容です。
2.テーマ:精密部品加工業のスマート工場化とIoT活用
2-1.テーマ概要と背景
業種: 精密機械部品加工業(金属切削加工)
企業規模: 資本金3,000万円、従業員45名
年商: 12億円
立地: 地方都市の工業団地
2-2.時事的背景との関連性
2025年は「2025年の崖」が現実化する年であり、老朽化したITシステムの刷新が喫緊の課題となっています。経済産業省の警告では、レガシーシステム放置により年間最大12兆円の経済損失リスクがあるとされ、特に中小製造業では基幹システムの見直しが不可欠です。
製造業DXの推進では、IoTデバイスやセンサーを活用した「情報の見える化」と「生産効率の向上」が実現されつつあります。具体的には、機械の稼働状況や温度をリアルタイムでモニタリングし、クラウドで一元管理することで、生産ラインのボトルネック早期発見や品質問題の迅速な原因特定が可能になります。ロボットやAIを用いた自動化により、作業員は人間しかできない業務に集中でき、最適な生産スケジュールを組むことも可能です。
政府は「省力化投資促進プラン」で2025~2029年を省力化投資集中期間と定め、ものづくり補助金やIT導入補助金で年間7,500件以上の支援を実施しています。全国的なサポート体制の整備も2026年度から開始予定です。
スマート工場EXPO 2025(10月名古屋開催)では、IoT/AI/FAによる製造革新、予兆保全、デジタルツイン、生産管理システムなど最新技術が600社以上出展し、中小製造業のDX化を後押ししています。
サプライチェーン全体での標準化・協調領域の深掘も重要テーマです。素形材産業と自動車産業が連携した図面標準化の推進・拡大により、受発注効率化が進められています。
2-3.与件文(約1,800字)
C社の概要と沿革:
C社は、地方都市の工業団地に位置する精密機械部品加工業である。資本金3,000万円、従業員45名、年商12億円で、自動車部品メーカーや産業機械メーカー向けに精密切削加工部品を製造している。創業は1980年、現社長の父(創業者)が町工場として設立し、NC旋盤を駆使した高精度加工を強みに成長してきた。
現社長(55歳・男性)は二代目で、2010年に社長に就任した。C社の主力製品は、自動車エンジン部品やポンプ用シャフトなど、ミクロン単位の精度が要求される金属切削加工品である。加工材料は、ステンレス、アルミ合金、真鍮など多岐にわたる。
従業員構成は、製造部35名(NC旋盤オペレーター15名、マシニングセンターオペレーター10名、検査員5名、製造補助5名)、営業部5名、総務部5名である。製造部には60歳以上のベテラン技術者が10名おり、熟練の技能と経験で高品質を維持している。
主要顧客は、自動車部品一次サプライヤー2社で売上の70%を占める。残り30%は、産業機械メーカーや医療機器メーカーなど多様な顧客である。受注形態は、定期的な量産品(ロットサイズ100~1,000個)が60%、試作品や小ロット品(ロットサイズ10~50個)が40%である。
経営環境の変化と課題:
近年、C社を取り巻く環境は厳しさを増している。第一に、自動車業界のEVシフトである。エンジン部品の需要が減少し、電動化に伴う新部品への対応が求められている。第二に、顧客からの短納期・高品質要求の強化である。従来は納期2週間だったが、最近は1週間以内の納期要求が増えている。第三に、人手不足である。若手人材の採用が困難で、ベテラン技術者の定年退職が近づいており、技能伝承が喫緊の課題となっている。
C社の生産管理システムは、20年前に導入したレガシーシステムであり、Windows XPベースで動作している。受注管理、工程管理、在庫管理が個別のシステムで運用され、データの一元管理ができていない。生産計画は、製造部長がExcelで手作業で作成しており、機械稼働状況や進捗状況のリアルタイム把握ができず、納期遅延が頻発している。
また、C社の工場には15台のNC工作機械があるが、機械ごとにメーカーや導入時期が異なり、稼働データの取得方法が統一されていない。一部の古い機械はデータ出力機能がなく、オペレーターが手書きで作業日報を記録している。このため、機械の稼働率や不良率の正確な把握が困難である。
品質管理では、全数検査を行っているが、検査員の目視・手測定に依存しており、検査時間がかかり生産性を圧迫している。また、不良品が発生した際の原因究明に時間がかかり、再発防止策の実施が遅れている。
現社長は、「このままでは競争力を失う。IoTやAIを活用したスマート工場化を進めなければ」という危機感を持っていた。
スマート工場化プロジェクトの始動:
2024年、C社は経済産業省の「IT導入補助金」と地域の「ものづくり補助金」を活用し、スマート工場化プロジェクトを開始した。プロジェクトリーダーには、大手製造業で生産技術を経験し2023年にC社に転職した生産技術課長(40歳・男性)を任命した。
プロジェクトの目標は、①生産管理システムの刷新(クラウドベース基幹システム導入)、②IoTによる機械稼働データのリアルタイム収集、③AI活用による生産計画最適化と予兆保全、④品質管理の自動化、の4本柱である。
第一段階:IoTセンサー導入
まず、全15台のNC工作機械にIoTセンサーを後付けで設置し、稼働状況(稼働時間、停止時間、加工数、異常発生)をリアルタイムで収集する仕組みを構築した。古い機械には、電流センサーを取り付け、電流値の変化から稼働状態を推定する手法を採用した。
収集したデータは、クラウド上の「製造DXプラットフォーム(NAVINECT®)」に蓄積され、ダッシュボードでリアルタイムに可視化される。製造部長と生産技術課長は、タブレット端末でいつでも稼働状況を確認できるようになった。
導入後、機械の稼働率が平均65%であることが判明した。停止時間の内訳を分析すると、「段取り替え」が30%、「材料待ち」が25%、「工具交換」が20%、「故障・トラブル」が15%、「その他」が10%であった。この可視化により、改善すべきポイントが明確になった。
第二段階:AI活用の生産計画最適化
次に、AIを活用した生産計画自動作成システムを導入した。受注情報、機械稼働データ、過去の加工実績データをAIが解析し、最適な生産スケジュールを自動生成する。従来は製造部長がExcelで半日かけて作成していたが、AIは数分で作成でき、かつ納期遅延リスクを最小化するスケジュールを提案する。
また、AIによる「予兆保全」も開始した。機械の振動データや電流データをAIが常時監視し、異常の予兆を検知すると自動でアラートを発する。これにより、故障前にメンテナンスを実施でき、突発的な機械停止を防ぐことができる。
第三段階:品質管理の自動化
品質管理では、画像認識AIを活用した自動外観検査装置を導入した。カメラで製品を撮影し、AIが傷や寸法不良を自動判定する。検査時間は従来の1/3に短縮され、検査精度も向上した。また、三次元測定機と連携し、寸法データを自動でシステムに記録する仕組みも構築した。
不良品が発生した際は、AIが過去の不良データと照合し、類似事例や原因を提示する。これにより、原因究明時間が大幅に短縮された。
成果と今後の展望:
スマート工場化プロジェクト導入後、以下の成果が得られた:①機械稼働率が65%から78%に向上、②納期遅延率が20%から5%に低減、③不良率が1.5%から0.8%に低減、④検査時間が30%短縮、⑤製造部長の生産計画作成時間が90%削減。
現社長は、「IoTとAIの導入で、勘と経験に頼っていた生産管理がデータドリブンになった。若手でも高品質な製品を作れる環境が整い、技能伝承の課題も解決に向かっている」と語る。
今後は、①サプライチェーン全体のデジタル連携(顧客の生産計画データと連携した自動受注)、②協働ロボット導入による省人化、③ベテラン技術者の暗黙知のAI学習とデジタル化、を計画している。
2-4.設問と解答例
2-4-第1問
【設問】
C社の⒜強みと⒝弱みを、それぞれ40字以内で述べよ。
【解答例】
⒜ミクロン単位の高精度切削加工技術と、ベテラン技術者の熟練技能による高品質製品製造力。(39字)
⒝レガシーシステムによるデータ一元管理不足と、技能伝承未対応による技術者高齢化のリスク。(44字)
【解答の根拠】
与件文に「ミクロン単位の精度が要求される金属切削加工品」「ベテラン技術者が10名おり、熟練の技能と経験で高品質を維持」とあり、高精度加工が強みです。弱みは「20年前に導入したレガシーシステム」「データの一元管理ができていない」「ベテラン技術者の定年退職が近づいており、技能伝承が喫緊の課題」と明記されています。
2-4-第2問
C社がスマート工場化を推進する上で直面していた生産管理上の問題について、以下の設問に答えよ。
(設問1)
C社の⒜生産計画作成における問題点と⒝IoT・AI導入によるその改善策を、それぞれ60字以内で述べよ。
【解答例】
⒜製造部長がExcelで手作業作成し半日要し機械稼働状況や進捗のリアルタイム把握ができず納期遅延が頻発していた。(54字)
⒝AIが受注情報と機械稼働データを解析し最適スケジュールを数分で自動生成し納期遅延リスクを最小化する。(52字)
【解答の根拠】
与件文に「製造部長がExcelで手作業で作成」「機械稼働状況や進捗状況のリアルタイム把握ができず、納期遅延が頻発」「AIが解析し、最適な生産スケジュールを自動生成」「従来は半日かけていたが、AIは数分で作成」と明記されています。
(設問2)
C社の⒜品質管理における問題点と⒝AI・自動化による改善策を、それぞれ60字以内で述べよ。
【解答例】
⒜検査員の目視・手測定に依存し検査時間がかかり生産性を圧迫し不良原因究明に時間がかかっていた。(48字)
⒝画像認識AIで外観検査を自動化し検査時間を1/3に短縮しAIが過去データから原因を提示し究明時間を短縮する。(57字)
【解答の根拠】
与件文に「検査員の目視・手測定に依存しており、検査時間がかかり生産性を圧迫」「不良品が発生した際の原因究明に時間がかかり」「画像認識AIを活用した自動外観検査装置を導入」「検査時間は従来の1/3に短縮」「AIが過去の不良データと照合し、類似事例や原因を提示」とあります。
2-4-第3問
C社がIoTセンサー導入により機械稼働データを可視化した結果、明らかになった課題と、その改善策について120字以内で述べよ。
【解答例】
機械稼働率が65%と低く停止時間の30%が段取り替え25%が材料待ちであることが判明した。改善策は段取り時間短縮のため工具・治具の標準化と外段取り化を推進し材料待ち解消のため資材調達システムと生産計画を連携させ適時適量供給する。(117字)
【解答の根拠】
与件文に「機械の稼働率が平均65%」「停止時間の内訳を分析すると、『段取り替え』が30%、『材料待ち』が25%」「この可視化により、改善すべきポイントが明確になった」とあります。IoT活用による情報の見える化で課題が明確になります。
2-4-第4問
C社がAIを活用した「予兆保全」を導入することの効果を、生産性向上の観点から120字以内で説明せよ。
【解答例】
機械の振動データや電流データをAIが常時監視し異常の予兆を検知し故障前にメンテナンスを実施できる。突発的な機械停止を防ぎ計画外のダウンタイムを削減し生産スケジュールの遅延を防止する。機械の稼働率が向上し生産性が向上する。(116字)
【解答の根拠】
与件文に「AIによる『予兆保全』」「機械の振動データや電流データをAIが常時監視し、異常の予兆を検知すると自動でアラートを発する」「故障前にメンテナンスを実施でき、突発的な機械停止を防ぐ」とあります。予兆保全は製造業DXの重要な実現目標です。
2-4-第5問
C社が今後サプライチェーン全体のデジタル連携を進める際の狙いと期待効果を、中小企業診断士として100字以内で助言せよ。
【解答例】
顧客の生産計画データと自社システムを連携させ受注情報を自動取得し生産計画を自動作成する。受発注業務の効率化とリードタイム短縮を実現し顧客との情報共有でWin-Win関係を構築しサプライチェーン全体の最適化を図る。(103字)
【解答の根拠】
与件文に「サプライチェーン全体のデジタル連携(顧客の生産計画データと連携した自動受注)」とあります。中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025では、サプライチェーン全体でのデジタルデータ連携により受発注企業ともにWin-Winの関係を築くことが強調されています。素形材産業と自動車産業の図面標準化も進んでいます。
3.テーマ:食品製造業のサプライチェーン効率化と脱炭素対応
3-1.テーマ概要と背景
業種: 業務用冷凍食品製造業
企業規模: 資本金5,000万円、従業員80名(うちパート50名)
年商: 18億円
立地: 地方都市郊外
3-2.時事的背景との関連性
2025年、製造業におけるカーボンニュートラル対応は「単なる環境対応」から「経営そのもの」として捉え直されています。2050年カーボンニュートラル達成に向け、企業には脱炭素への具体的なアクションが求められ、中小企業の4社に1社(25.7%)がすでに取引先から脱炭素要請を受けています。
製造業カーボンニュートラル展2025では、太陽光PPA、小型水力発電、省エネ型ポンプ、遮熱塗料といった多様なアプローチが提示され、「導入コストをどう抑えるか」「効果をどう数値で示すか」「既存環境に適応できるか」が共通テーマです。
サプライチェーン全体での脱炭素化も重要です。Scope3(サプライチェーン排出量)削減が求められ、中小企業も大手取引先から排出量報告や削減計画提出を求められるようになっています。
物流効率化では、「新技術活用サプライチェーン全体輸送効率化・非化石エネルギー転換推進事業」が国土交通省により支援されています。食品製造業では、原材料調達から配送までのサプライチェーン最適化が生産性向上とCO2削減の鍵です。
省エネ・脱炭素補助金も充実しており、国・都道府県レベルで省エネ設備導入支援、再生可能エネルギー導入支援、EV導入支援などが提供されています。
3-3.与件文
C社の概要と沿革:
C社は、地方都市郊外に位置する業務用冷凍食品製造業である。資本金5,000万円、従業員80名(正社員30名、パート50名)、年商18億円で、コンビニエンスストアや外食チェーン向けに冷凍弁当・総菜を製造している。創業は1990年、現社長の父(創業者)が惣菜製造業として設立し、2000年代に冷凍食品に特化して成長してきた。
現社長(50歳・男性)は二代目で、2015年に社長に就任した。C社の主力製品は、冷凍弁当(和食・洋食)、冷凍総菜(唐揚げ、ハンバーグ、コロッケなど)、冷凍米飯である。製品は、コンビニ店舗で温めて販売される形態や、外食チェーンの厨房で使用される業務用形態がある。
工場は、原材料保管エリア、前処理エリア、調理エリア、盛付・包装エリア、冷凍保管エリア、出荷エリアの6エリアで構成される。HACCP対応の衛生管理体制を整備している。生産ラインは3ライン(弁当ライン、総菜ライン、米飯ライン)あり、24時間稼働ではなく、1日8時間×2シフトで運営している。
主要顧客は、大手コンビニチェーン2社で売上の60%を占める。残り40%は、外食チェーン、給食業者、地元スーパーなど多様である。受注は、週次で翌週分の発注を受け、3日後に納品する形態が中心である。
経営環境の変化と課題:
近年、C社を取り巻く環境は大きく変化している。第一に、原材料価格と光熱費の高騰である。2022年以降、小麦・食用油・鶏肉などの原材料価格が30~50%上昇し、電気代・ガス代も2倍近くに高騰した。第二に、顧客からの脱炭素要請である。大手コンビニチェーンから、「2030年までにサプライヤー全体でCO2排出量30%削減」という目標が提示され、C社にも排出量報告と削減計画の提出が求められている。第三に、物流費の上昇である。2024年問題(ドライバーの時間外労働規制)により、配送費が20%上昇した。
C社の工場では、調理工程で大量のガスを使用しており、冷凍保管・冷蔵保管で24時間電力を消費している。年間のエネルギー消費量は、電力250万kWh、都市ガス60万㎥であり、CO2排出量は年間約1,500トンと推定される。しかし、C社はこれまでエネルギー使用量の詳細な計測や分析を行っておらず、どの工程でどれだけCO2を排出しているか把握できていない。
また、原材料調達では、国内外の複数サプライヤーから仕入れているが、調達リードタイムが長く、在庫過多や欠品が発生している。原材料在庫は平均30日分保有しており、冷蔵・冷凍保管コストが経営を圧迫している。
配送では、自社トラック3台と外部委託を併用しているが、配送ルートの最適化ができておらず、積載率が低い(平均60%)。また、顧客からの急な注文変更に対応できず、機会損失が発生している。
現社長は、「コスト上昇と脱炭素要請に対応しなければ、取引継続が危ぶまれる。サプライチェーン全体を見直し、効率化と脱炭素化を同時に実現しなければ」と危機感を抱いていた。
サプライチェーン効率化と脱炭素化プロジェクト:
2024年、C社は経済産業省の「省エネ補助金」と環境省の「脱炭素設備導入支援事業」を活用し、サプライチェーン効率化と脱炭素化プロジェクトを開始した。プロジェクトリーダーには、食品メーカーで生産管理を経験し2023年にC社に入社した生産管理部長(45歳・男性)を任命した。
プロジェクトの目標は、①エネルギー使用量の見える化とCO2排出量削減、②原材料調達・在庫管理の最適化、③配送ルート最適化と積載率向上、④再生可能エネルギーの導入、の4本柱である。
第一段階:エネルギー見える化と省エネ施策
まず、工場内の主要設備(調理釜、冷凍機、冷蔵庫、空調、照明など)にエネルギー計測器を設置し、エネルギー使用量を工程別・設備別にリアルタイムで計測する仕組みを構築した。データはクラウドに蓄積され、ダッシュボードで可視化される。
分析の結果、調理工程のガス使用量が全体の40%、冷凍・冷蔵設備の電力使用量が30%、空調が20%、その他が10%であることが判明した。特に、夜間のアイドリング時にも冷凍機が高出力で稼働しており、無駄なエネルギー消費が多いことがわかった。
改善策として、①調理釜の高効率ガスバーナーへの更新、②冷凍機のインバーター制御導入(負荷に応じて出力調整)、③工場照明のLED化、④遮熱塗料による屋根・壁の断熱強化、を実施した。これにより、年間エネルギー使用量を15%削減し、CO2排出量を約225トン削減した。
第二段階:太陽光発電導入
次に、工場屋根に太陽光発電設備(200kW)を設置した。初期投資はPPAモデル(第三者所有型)を採用し、発電事業者が設備を所有・運営し、C社は発電した電力を固定価格で購入する契約とした。これにより、初期投資ゼロで再生可能エネルギーを導入できた。
太陽光発電により、工場電力の約15%を賄うことができ、年間CO2排出量をさらに約150トン削減した。合計で年間375トン(全体の25%)のCO2削減を達成した。
第三段階:サプライチェーン効率化
原材料調達では、サプライヤーとのデジタル連携を強化した。サプライヤーの在庫情報と納期情報をシステムで共有し、需要予測に基づいて適時適量発注する仕組みを構築した。これにより、原材料在庫を30日分から20日分に削減し、在庫保管コストを年間1,000万円削減した。
配送では、AIを活用した配送ルート最適化システムを導入した。複数の配送先を効率的に回るルートをAIが自動計算し、積載率が60%から80%に向上した。また、共同配送(他社との混載)も開始し、配送回数を削減した。これにより、配送にかかるCO2排出量を20%削減した。
第四段階:Scope3削減とサプライチェーン全体の脱炭素化
C社は、自社工場(Scope1・2)だけでなく、サプライチェーン全体(Scope3)のCO2削減にも取り組んだ。サプライヤーに対して、CO2排出量の報告を要請し、排出量の多いサプライヤーには削減計画の提出を求めた。また、地元の農家と連携し、地産地消による輸送距離短縮を推進した。
顧客への報告では、LCA(ライフサイクルアセスメント)を実施し、製品1個あたりのCO2排出量を算出した。大手コンビニチェーンに対して、「C社製品はCO2排出量25%削減を達成」という報告を行い、評価を得た。
成果と今後の展望:
プロジェクト導入後、以下の成果が得られた:①CO2排出量25%削減(年間375トン削減)、②エネルギーコスト15%削減(年間2,000万円削減)、③原材料在庫削減による保管コスト削減(年間1,000万円)、④配送費10%削減(年間800万円)、⑤大手顧客からの評価向上と取引継続。
現社長は、「脱炭素は負担ではなく、コスト削減と競争力強化につながる経営戦略だと実感した。今後も継続的に改善を進める」と語る。
今後は、①廃棄物削減とリサイクル推進、②バイオマス燃料や水素エネルギーの検討、③カーボンニュートラル認証取得、を計画している。
3-4.設問と解答例
3-4-第1問
【設問】
C社の⒜強みと⒝弱みを、それぞれ40字以内で述べよ。
【解答例】
⒜HACCP対応の衛生管理体制と大手コンビニチェーンとの安定取引関係による信頼性。(39字)
⒝エネルギー使用量の未計測によるCO2排出状況の不明確さと原材料在庫過多による高コスト体質。(47字)
【解答の根拠】
与件文に「HACCP対応の衛生管理体制を整備」「大手コンビニチェーン2社で売上の60%」とあり、品質管理力と取引基盤が強みです。弱みは「エネルギー使用量の詳細な計測や分析を行っておらず」「原材料在庫は平均30日分保有しており、保管コストが経営を圧迫」と明記されています。
3-4-第2問
C社が脱炭素化を推進する上で直面していた課題について、以下の設問に答えよ。
(設問1)
C社の⒜エネルギー管理における問題点と⒝見える化による改善策を、それぞれ60字以内で述べよ。
【解答例】
⒜エネルギー使用量を工程別・設備別に計測しておらずどこで無駄が発生しているか把握できず削減策を立案できなかった。(57字)
⒝計測器で工程別・設備別にリアルタイム計測しデータを可視化し無駄な消費箇所を特定し高効率設備更新や制御改善を実施する。(60字)
【解答の根拠】
与件文に「エネルギー使用量の詳細な計測や分析を行っておらず、どの工程でどれだけCO2を排出しているか把握できていない」「主要設備にエネルギー計測器を設置」「ダッシュボードで可視化」「無駄なエネルギー消費が多いことがわかった」とあります。見える化は製造業DXの基本です。
(設問2)
C社の⒜原材料調達・在庫管理における問題点と⒝デジタル連携による改善策を、それぞれ60字以内で述べよ。
【解答例】
⒜調達リードタイムが長く在庫過多や欠品が発生し原材料在庫30日分保有で冷蔵・冷凍保管コストが経営を圧迫していた。(58字)
⒝サプライヤーと在庫・納期情報をシステムで共有し需要予測に基づき適時適量発注し在庫を20日分に削減し保管コストを削減する。(63字)
【解答の根拠】
与件文に「調達リードタイムが長く、在庫過多や欠品が発生」「原材料在庫は平均30日分保有しており、保管コストが経営を圧迫」「サプライヤーとのデジタル連携を強化」「需要予測に基づいて適時適量発注」「在庫を30日分から20日分に削減」とあります。サプライチェーンDXの重要性が強調されています。
3-4-第3問
【設問】
C社がPPAモデルで太陽光発電を導入した理由と、その効果について120字以内で説明せよ。
【解答例】
PPAモデルは発電事業者が設備を所有・運営しC社は電力を固定価格で購入する契約で初期投資ゼロで再生可能エネルギーを導入できる。工場電力の15%を太陽光で賄いCO2排出量150トン削減し電気料金変動リスクを軽減し脱炭素経営を実現する。(120字)
【解答の根拠】
与件文に「PPAモデル(第三者所有型)を採用し、発電事業者が設備を所有・運営し、C社は発電した電力を固定価格で購入」「初期投資ゼロで再生可能エネルギーを導入」「工場電力の約15%を賄う」「CO2排出量をさらに約150トン削減」とあります。PPAは中小企業に適した再エネ導入モデルです。
3-4-第4問
【設問】
C社が配送ルート最適化と共同配送を実施することの効果を、コスト削減と環境対応の観点から120字以内で述べよ。
【解答例】
AIが複数配送先を効率的に回るルートを自動計算し積載率を60%から80%に向上させ配送回数を削減する。配送費10%削減しコストを削減する。配送にかかるCO2排出量を20%削減し環境負荷を低減する。共同配送で物流効率化とサプライチェーン全体の脱炭素化に貢献する。(135字)
【解答の根拠】
与件文に「AIを活用した配送ルート最適化システム」「積載率が60%から80%に向上」「共同配送(他社との混載)も開始し、配送回数を削減」「配送にかかるCO2排出量を20%削減」「配送費10%削減」とあります。物流DXは2025年の重要テーマです。
3-4-第5問
C社が今後Scope3削減に取り組む際の施策を、中小企業診断士として100字以内で助言せよ。
【解答例】
サプライヤーにCO2排出量報告を要請し削減計画提出を求める。地産地消で輸送距離を短縮する。LCAで製品1個あたりのCO2排出量を算出し顧客に報告する。サプライチェーン全体の脱炭素化を推進し取引先との信頼関係を強化する。(105字)
【解答の根拠】
与件文に「サプライヤーに対して、CO2排出量の報告を要請」「排出量の多いサプライヤーには削減計画の提出を求めた」「地産地消による輸送距離短縮」「LCAを実施し、製品1個あたりのCO2排出量を算出」とあります。Scope3削減は取引先から要請される重要課題です。
4.テーマ:金属加工業の技能伝承とAI品質管理
4-1.テーマ概要と背景
業種: 金属プレス加工業
企業規模: 資本金4,000万円、従業員55名
年商: 10億円
立地: 地方都市の工業地域
4-2.時事的背景との関連性
製造業における深刻な人手不足と技能伝承の課題が2025年も継続しています。省力化投資促進プランでは、中小製造業の生産性向上に向け、2025~2029年を省力化投資集中期間と位置づけ、人手不足対策を重点支援しています。
AI・IoTの活用により、ベテラン技術者の暗黙知をデジタル化し、若手に伝承する取り組みが進んでいます。画像認識AIによる品質検査の自動化、AIによる不良原因分析、デジタルツイン技術による加工シミュレーションなどが実用化されています。
スマート工場EXPO 2025では、金型IoT(金型管理TOPブランド、最新機能と金型貸与先管理ソリューション)、設備の見える化と不具合分析・予兆保全が可能な製造DX、AIオプションでの効率向上などが展示されています。
製造業の標準化も重要テーマです。素形材産業と自動車産業が連携した制作図面等のルール標準化により、企業間での効率化が実現されています。
4-3.与件文
C社の概要と沿革:
C社は、地方都市の工業地域に位置する金属プレス加工業である。資本金4,000万円、従業員55名、年商10億円で、自動車部品メーカーや電機メーカー向けに板金プレス加工品を製造している。創業は1975年、現社長の父(創業者)が金型設計・製作から始め、高精度プレス加工を強みに成長してきた。
現社長(58歳・男性)は二代目で、2005年に社長に就任した。C社の主力製品は、自動車用ブラケット、電子機器用筐体、産業機械用カバーなど、板厚0.5~3mmの鋼板・アルミ板・ステンレス板を用いたプレス加工品である。
従業員構成は、製造部45名(プレス加工20名、金型製作・保全10名、検査5名、製造補助10名)、営業部5名、総務部5名である。製造部には、金型設計・製作ができるベテラン技術者が3名(いずれも60歳以上)おり、C社の技術力の源泉となっている。
C社の強みは、金型設計・製作から量産プレス加工まで一貫対応できることである。顧客の図面を受け取り、金型を社内設計・製作し、量産加工・検査まで行う。金型製作期間は平均3週間、量産品の納期は2週間である。
主要顧客は、自動車部品一次サプライヤー3社で売上の70%を占める。残り30%は、電機メーカー、産業機械メーカーなど多様である。受注形態は、量産品(ロットサイズ1,000~10,000個)が80%、試作品(ロットサイズ10~100個)が20%である。
経営環境の変化と課題:
近年、C社を取り巻く環境は厳しさを増している。第一に、ベテラン技術者の高齢化と技能伝承の遅れである。金型設計・製作ができるベテラン3名は、いずれも定年を迎えるが、後継者が育っていない。若手社員を採用しても、金型技術の習得に10年以上かかるため、伝承が間に合わない。第二に、品質要求の厳格化である。自動車部品では不良率0.1%以下(1,000個に1個以下)が要求されるが、C社の不良率は0.3%で目標に届いていない。第三に、短納期化の要求である。金型製作期間を3週間から2週間に短縮するよう顧客から要請されている。
C社の品質管理では、全数検査を行っているが、検査員の目視・ノギス測定に依存しており、検査員の技量により判定にばらつきがある。また、不良品が発生した際、ベテラン技術者が金型を調整して対処しているが、なぜ不良が発生したのか、どう調整したのかという知見が文書化されておらず、若手に伝承されていない。
生産管理では、プレス機械の稼働状況や金型の使用履歴を紙の台帳で管理しており、金型のメンテナンス時期を逃して突発故障が発生することがある。また、金型は社内に300型以上あるが、保管場所や使用状態がシステム化されておらず、必要な金型を探すのに時間がかかる。
現社長は、「ベテラン技術者が退職したら、C社の技術力は失われる。AIやIoTを使って、暗黙知をデジタル化し、若手に伝承しなければ」と強い危機感を持っていた。
技能伝承とAI品質管理プロジェクト:
2024年、C社は経済産業省の「ものづくり補助金」と「IT導入補助金」を活用し、技能伝承とAI品質管理プロジェクトを開始した。プロジェクトリーダーには、大手自動車部品メーカーで生産技術を経験し2023年にC社に転職した技術部長(42歳・男性)を任命した。
プロジェクトの目標は、①金型設計・製作の標準化とデジタル化、②AI活用による品質検査の自動化、③金型管理IoTシステム導入、④ベテラン技術者の暗黙知のデータベース化、の4本柱である。
第一段階:金型設計・製作の標準化
まず、ベテラン技術者3名にインタビューを実施し、金型設計・製作のノウハウを聞き取った。「どのような形状にどの金型構造を選ぶか」「材料ごとのスプリングバック量の見積もり方」「金型調整のコツ」などを文書化し、「金型設計・製作マニュアル」を作成した。
また、過去の金型設計データ(CADデータ)を整理し、製品形状ごとに標準金型構造をデータベース化した。若手技術者は、このデータベースを参照することで、類似製品の金型設計を効率的に行えるようになった。
さらに、3次元CADと金型シミュレーションソフトを導入し、設計段階で成形性を検証できるようにした。これにより、金型試作後の修正回数が減少し、金型製作期間が3週間から2週間に短縮された。
第二段階:AI活用による品質検査の自動化
次に、画像認識AIを活用した自動外観検査装置を導入した。カメラで製品を撮影し、AIが傷・打痕・寸法不良を自動判定する。AIは、ベテラン検査員が過去に判定した数万枚の画像データを学習し、人間と同等以上の精度で判定できるようになった。
また、三次元測定機と連携し、寸法データを自動でシステムに記録する仕組みも構築した。測定結果は、統計的工程管理(SPC)ソフトで自動解析され、工程能力指数(Cpk)や不良傾向をリアルタイムで監視する。異常の予兆が検知されると、アラートが発せられ、作業者が早期に対処できる。
導入後、不良率が0.3%から0.08%に低減し、目標の0.1%以下を達成した。また、検査時間が40%短縮され、生産性が向上した。
第三段階:金型管理IoTシステム導入
金型管理では、全300型にRFIDタグを取り付け、保管場所・使用履歴・メンテナンス履歴をシステムで一元管理する仕組みを構築した。金型を使用するたびに、RFIDリーダーでスキャンし、使用回数がカウントされる。設定した使用回数に達すると、自動でメンテナンス通知が発せられ、計画的な保全が可能になった。
また、金型にIoTセンサーを取り付け、プレス時の荷重・温度・振動をリアルタイムで計測する仕組みも試験導入した。AIがデータを解析し、金型の摩耗や破損の予兆を検知する「金型予兆保全」を実現した。
第四段階:ベテラン技術者の暗黙知のAI学習
最も画期的な取り組みは、ベテラン技術者の暗黙知をAIに学習させることである。ベテランが金型調整を行う際、どの部位をどれだけ削るか、どう研磨するかという作業を動画で記録し、音声でコメントを残す。この動画と音声データをAIが解析し、「不良Aが発生した場合は、金型B部位をC方向にD mm調整する」というルールを自動抽出する。
若手技術者は、不良が発生した際、AIチャットボットに「この不良の原因と対処法は?」と質問すると、AIが過去の類似事例と対処法を提示する。これにより、ベテランがいなくても、若手が適切に対処できるようになった。
成果と今後の展望:
プロジェクト導入後、以下の成果が得られた:①金型製作期間が3週間から2週間に短縮、②不良率が0.3%から0.08%に低減、③検査時間40%短縮、④金型突発故障70%削減、⑤若手技術者の技能習得期間が半減。
現社長は、「AIとIoTにより、ベテランの技能を若手に伝承できる道筋が見えた。これで会社の技術力を次世代につなげることができる」と語る。
今後は、①デジタルツイン技術による金型設計・製作のバーチャルシミュレーション、②協働ロボットによる金型セッティング自動化、③顧客とのデジタル連携による受発注効率化、を計画している。
4-4.設問と解答例
4-4-第1問
【設問】
C社の⒜強みと⒝弱みを、それぞれ40字以内で述べよ。
【解答例】
⒜金型設計・製作から量産プレス加工まで一貫対応できる技術力とベテラン技術者の高度な技能。(42字)
⒝ベテラン技術者の高齢化と後継者不在による技能伝承の遅れと品質検査の属人化による判定ばらつき。(48字)
【解答の根拠】
与件文に「金型設計・製作から量産プレス加工まで一貫対応できること」「金型設計・製作ができるベテラン技術者が3名」とあり、一貫生産体制が強みです。弱みは「ベテラン3名は、いずれも定年を迎えるが、後継者が育っていない」「検査員の技量により判定にばらつきがある」と明記されています。
4-4-第2問
C社が技能伝承とAI品質管理を推進する上で直面していた課題について、以下の設問に答えよ。
(設問1)
C社の⒜金型製作における技能伝承上の問題点と⒝標準化・デジタル化による改善策を、それぞれ60字以内で述べよ。
【解答例】
⒜金型設計・製作のノウハウがベテランの暗黙知として文書化されず若手が技能習得に10年以上要し伝承が間に合わない。(56字)
⒝ベテランの知見を文書化しマニュアル作成し過去の設計データをデータベース化し3DCADとシミュレーションで検証し標準化する。(62字)
【解答の根拠】
与件文に「金型技術の習得に10年以上かかるため、伝承が間に合わない」「ベテラン技術者にインタビューを実施し、ノウハウを聞き取った」「金型設計・製作マニュアルを作成」「過去の金型設計データを整理」「標準金型構造をデータベース化」「3次元CADと金型シミュレーションソフトを導入」とあります。
(設問2)
C社の⒜品質検査における問題点と⒝AI活用による改善策を、それぞれ60字以内で述べよ。
【解答例】
⒜検査員の目視・手測定に依存し技量により判定にばらつきがあり不良率0.3%で目標0.1%以下に届いていない。(53字)
⒝画像認識AIで外観検査を自動化しベテラン判定データを学習させ人間と同等以上の精度で判定し不良率を0.08%に低減する。(60字)
【解答の根拠】
与件文に「検査員の目視・ノギス測定に依存しており、検査員の技量により判定にばらつきがある」「不良率は0.3%で目標に届いていない」「画像認識AIを活用した自動外観検査装置」「ベテラン検査員が過去に判定した数万枚の画像データを学習」「不良率が0.3%から0.08%に低減」とあります。
4-4-第3問(配点20点)
C社が金型管理IoTシステムを導入することの効果を、金型保全と生産性向上の観点から120字以内で説明せよ。
【解答例】
全金型にRFIDタグを取り付け保管場所・使用履歴・メンテナンス履歴を一元管理し使用回数カウントで計画的保全を実現し突発故障を70%削減する。IoTセンサーで荷重・温度・振動を計測しAIが摩耗や破損の予兆を検知し予兆保全を実現し金型寿命を延長し生産性が向上する。(134字)
【解答の根拠】
与件文に「全300型にRFIDタグを取り付け、保管場所・使用履歴・メンテナンス履歴をシステムで一元管理」「使用回数に達すると、自動でメンテナンス通知が発せられ、計画的な保全が可能」「IoTセンサーでプレス時の荷重・温度・振動をリアルタイムで計測」「金型の摩耗や破損の予兆を検知」「金型突発故障70%削減」とあります。金型IoTは2025年のスマート工場EXPOで注目されています。
4-4-第4問
【設問】
C社がベテラン技術者の暗黙知をAIに学習させる取り組みの意義を、技能伝承の観点から120字以内で述べよ。
【解答例】
ベテランの金型調整作業を動画と音声で記録しAIが解析しルールを自動抽出する。若手が不良発生時にAIチャットボットに質問すると過去の類似事例と対処法を提示しベテラン不在でも適切に対処できる。暗黙知をデジタル化し次世代に伝承し技能習得期間を半減し技術力を維持する。(133字)
【解答の根拠】
与件文に「ベテランが金型調整を行う際、作業を動画で記録し、音声でコメントを残す」「AIが解析し、ルールを自動抽出」「AIチャットボットに質問すると、過去の類似事例と対処法を提示」「ベテランがいなくても、若手が適切に対処できる」「若手技術者の技能習得期間が半減」とあります。AIによる暗黙知デジタル化は製造業DXの重要テーマです。
4-4-第5問
【設問】
C社が今後デジタルツイン技術を活用する際の期待効果を、中小企業診断士として100字以内で助言せよ。
【解答例】
金型設計・製作をバーチャル空間でシミュレーションし試作前に成形性や不良発生を予測し設計最適化できる。物理試作回数を削減しリードタイム短縮とコスト削減を実現する。デジタル空間で若手が学習でき技能伝承を加速する。(103字)
【解答の根拠】
与件文に「デジタルツイン技術による金型設計・製作のバーチャルシミュレーション」とあります。デジタルツインは、物理世界をデジタル空間に再現し、シミュレーションや最適化を行う技術で、製造業DXの最先端です。
5.総括
2025年度の事例IIIでは、製造業DX(IoT・AI活用)、カーボンニュートラル・脱炭素対応、サプライチェーン効率化、技能伝承とデジタル化という2025年特有の時事トレンドを反映しつつ、生産効率化・品質向上と技術力を活かした高付加価値化という一貫したテーマが継続すると予測されます。3つのテーマはいずれも、デジタル技術を活用した生産革新と、環境・社会課題への対応を実践する内容です。
テーマ1(精密部品加工業)は、2025年の崖とスマート工場化を背景に、IoT・AI活用による生産管理革新を問います。テーマ2(食品製造業)は、カーボンニュートラル対応とサプライチェーン効率化を背景に、脱炭素経営と物流DXを問います。テーマ3(金属加工業)は、人手不足と技能伝承を背景に、AIによる暗黙知デジタル化と品質管理自動化を問います。
受験生の皆様は、2025年の製造業トレンド(スマート工場・IoT、カーボンニュートラル、サプライチェーンDX、省力化投資、AI活用)を整理し、事例IIIの本質である「QCD(品質・コスト・納期)改善」「生産プロセス革新」「技術力強化」の視点で解答できるよう準備されることを推奨します。本予測が皆様の合格の一助となれば幸いです。


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