【中小企業診断士】二次試験直前対策 ~事例Ⅱ~ 2025年度のテーマ予測と与件文・問題・解答例

2025年度 中小企業診断士 事例Ⅱのテーマ予測を象徴するライブコマース・生成AI・サブスクのイメージ図 (最新年度)事例別予測
2025年度中小企業診断士 事例Ⅱテーマを象徴するライブコマース・生成AI・サブスクのイメージです。

1.2025年度事例Ⅱのテーマ予測の総論

中小企業診断士の過去5年間(2020~2024年)の事例Ⅱを分析すると、EC・デジタル販売の強化新規顧客開拓による販路拡大が一貫したテーマであり、毎年異なる業種で時事性の高いマーケティング課題が問われています。2025年の経営環境では、大阪・関西万博開催(4~10月)による経済効果約2兆円と訪日客増加、TikTok Shopの日本上陸(6月)によるライブコマース市場の急拡大、生成AIのマーケティング活用(担当者の65%が活用)、サブスクリプションビジネスの浸透、Z世代を中心としたSNS起点の購買行動といった顕著なトレンドがあります。

中小企業白書2025では、デジタル化とEC活用が中小企業の成長戦略として重視されており、地域ブランド戦略やストーリーテリングによる差別化が効果的とされています。

これらを踏まえ、2025年度事例IIでは以下の3テーマを予測します:

  1. 地方酒造メーカーの万博活用とライブコマース戦略
  2. 地域特産品EC事業者のサブスクモデルと生成AI活用
  3. 伝統菓子メーカーのインバウンド体験型販売とD2C展開

いずれも2025年特有の時事性と最新マーケティング手法を反映した内容です。

2.テーマ:地方酒造メーカーの万博活用とライブコマース戦略

1-1.テーマ概要と背景

業種: 地方の日本酒製造・販売業
企業規模: 従業員約30名、年商8億円
立地: 近畿地方の地方都市(大阪から電車で約1.5時間)

1-2.時事的背景との関連性

2025年は大阪・関西万博が4月13日から10月13日まで開催され、約2,820万人(うち訪日外国人約350万人)の来場が見込まれる世界的イベントです。政府試算では経済効果は約2兆円とされ、関西全域への波及効果が期待されています。2025年9月時点で訪日外国人数は月間300万人を超えており、インバウンド需要は完全に回復しています。万博来場者の多くが関西周遊観光を行うと予測され、「セカンドシティ観光」として大阪から日帰り圏内の地方都市への誘客が注目されています。

日本酒業界では、若年層・女性層の日本酒離れが深刻な課題となっており、新規顧客開拓が急務です。一方、インバウンド市場では日本酒は「体験型コンテンツ」として高い人気があり、酒蔵見学や試飲体験が訪日客に好評です。

デジタルマーケティングの観点では、2025年6月にTikTok Shopが日本で本格スタートし、ライブコマース市場が急拡大しています。TikTok Shopは、ライブ配信を視聴しながらアプリ内でシームレスに商品を購入できる「ディスカバリーEコマース」であり、潜在顧客への衝動買いを促す新たな販売チャネルとして注目されています。Z世代を中心に、SNSでの情報発見から購買までの導線が確立されており、InstagramやTikTokが購買の重要なトリガーとなっています。

生成AIの活用も2025年のマーケティングトレンドです。AIによるコンテンツ自動生成、パーソナライズメール、広告最適化などが実用化され、中小企業でも少人数で高品質なマーケティングが可能になっています。​

1-3.与件文

B社の概要と沿革:

B社は、近畿地方の地方都市に位置する創業120年の日本酒製造業者である。従業員は約30名、年商は8億円で、地元の酒米を使った純米酒を中心に製造している。創業者一族が代々経営を引き継ぎ、現社長(60歳・男性)は四代目である。B社の強みは、地元契約農家との協力による高品質な酒米の調達と、杜氏の伝統的な醸造技術である。主力商品は「純米大吟醸X」で、全国新酒鑑評会で金賞を複数回受賞している。

主要販路は、地元の酒販店と県内の飲食店への卸売が中心で、売上の7割を占める。残り3割は直営店舗と自社ECサイトでの直販である。直営店舗は酒蔵に隣接しており、試飲スペースと土産物販売コーナーを備えている。年間約1万人の来客があり、うち約2割が訪日外国人である。

経営環境の変化と課題:

近年、B社を取り巻く環境は大きく変化している。第一に、国内市場の縮小である。若年層のアルコール離れと人口減少により、日本酒の国内消費量は長期的に減少傾向にある。特に20~30代の若年層や女性層では日本酒を飲む機会が少なく、新規顧客獲得が困難である。

第二に、コロナ禍の影響である。2020~2022年は飲食店への卸売が大幅に減少し、売上が3割減少した。2023年以降は回復傾向にあるが、コロナ前の水準には戻っていない。

第三に、インバウンド需要の変化である。コロナ前は訪日外国人客が直営店舗を訪れ、試飲体験や土産購入をしていたが、コロナで途絶えた。2024年以降インバウンドが回復し、再び外国人客が増加しているが、B社は多言語対応やキャッシュレス決済が不十分で、十分に対応できていない。

現社長は、「このままでは先細りだ」という危機感を持ち、新たな販路開拓とマーケティング強化の必要性を認識していた。

大阪万博とライブコマースの機会:

2025年4月に大阪・関西万博が開幕し、B社にとって千載一遇のチャンスが訪れた。万博会場から電車で約1.5時間という立地を活かし、万博来場者を誘客できる可能性がある。地元観光協会も万博連携プロモーションを展開しており、B社もこれに参加している。

また、現社長の長女(32歳)が2024年にB社に入社し、デジタルマーケティング担当に就任した。長女は大学でマーケティングを専攻し、大手EC企業でSNSマーケティングとライブコマースの経験を5年間積んでいた。長女は、「TikTok Shopを活用したライブコマースで若年層と外国人客にリーチできる」と提案し、社長も賛同した。

長女は、以下の戦略を立案した:①TikTok ShopとInstagramでのライブコマース配信、②万博来場者向けの酒蔵見学ツアーとEC誘導施策、③生成AIを活用したSNSコンテンツ自動生成、④若年層・女性層向けの新商品開発(スパークリング日本酒、フルーツフレーバー酒)、⑤多言語対応とキャッシュレス決済の整備。

ライブコマースの実践と成果:

2025年6月、B社はTikTok Shopアカウントを開設し、週2回のライブ配信を開始した。配信内容は、杜氏が醸造工程を実演しながら日本酒の魅力を語る「酒蔵ライブツアー」と、長女が新商品を試飲しながら視聴者の質問に答える「おしゃべり試飲会」である。配信中、視聴者はアプリ内でワンクリックで商品を購入できる。

初回配信では約500人が視聴し、50本の日本酒が売れた。視聴者の多くは20~30代の女性で、「日本酒は難しいイメージがあったけど、ライブで説明を聞いて興味を持った」「杜氏の情熱が伝わって感動した」といったコメントが寄せられた。また、外国人視聴者も多く、英語字幕を付けたことで海外からの注文も入った。

長女は、生成AIツール(ChatGPT)を使って、配信告知文やSNS投稿文を自動生成し、少人数でも効率的にマーケティングを回せる体制を構築した。また、AIによる顧客データ分析で、視聴者の嗜好や購買パターンを把握し、パーソナライズされたレコメンドメールを送信した。

万博連携施策と今後の展望:

B社は、万博期間中、地元観光協会と連携して「万博×酒蔵見学ツアー」を企画した。万博会場から直営店舗までのシャトルバスを運行し、酒蔵見学・試飲体験・ランチのセットツアーを提供する。ツアー参加者には、ECサイトで使える割引クーポンを配布し、帰国後もリピート購入を促す仕組みである。

また、万博公式ライセンス商品として、B社の日本酒を販売する機会も得た。万博オフィシャルストアやEC販売で、全国・海外への認知拡大が期待される。

長女は、「ライブコマースは単なる販売チャネルではなく、顧客とのコミュニケーションツールだ」と考えている。配信で視聴者と対話し、商品への理解と共感を深めることで、長期的なファン獲得を目指す。今後は、InstagramとTikTokを使い分け、Instagramではブランドストーリーや製造工程を発信してファン化を図り、TikTokでは衝動買いを促すライブ販売を展開する戦略である。

現社長は、「長女のデジタルマーケティングで新しい顧客層が開けた。伝統を守りつつ、時代に合わせた販売手法を取り入れることが生き残りの鍵だ」と語る。

1-4.設問と解答例

1-4-.1問

【設問】
B社が若年層・女性層の新規顧客開拓に苦戦していた理由を、従来の販路とターゲット顧客の観点から100字以内で説明せよ。

【解答例】
卸売中心の販路では酒販店や飲食店経由で中高年男性に届くため若年層・女性層への接点が少なく、日本酒の魅力や飲み方を直接伝える機会がなかった。また商品が伝統的な純米酒中心で若年層・女性層の嗜好に合わなかったため。(99字)

【解答の根拠】
与件文に「地元の酒販店と県内の飲食店への卸売が中心で、売上の7割を占める」「若年層のアルコール離れ」「特に20~30代の若年層や女性層では日本酒を飲む機会が少なく」と明記されています。卸売販路では最終消費者との直接接点が限られ、若年層・女性層にリーチできないことが課題です。

1-4-第2問

【設問】
B社がTikTok Shopを活用したライブコマースに取り組む戦略上の利点を、ターゲット顧客の購買行動とライブコマースの特性の観点から150字以内で述べよ。

【解答例】
Z世代・若年層はSNSで情報発見し衝動買いする購買行動をとるため、TikTokのディスカバリーEコマースで潜在顧客にリーチできる。ライブ配信でリアルタイムに商品説明し視聴者の質問に答えることで日本酒への理解と信頼を醸成でき、アプリ内でシームレスに購入できるため購買ハードルが低い。杜氏の情熱や製造工程を可視化しストーリーを伝えることで共感を生み購買意欲を高める。(179字)

【解答の根拠】
与件文に「TikTok Shopを活用したライブコマースで若年層と外国人客にリーチできる」「視聴者はアプリ内でワンクリックで商品を購入できる」「杜氏の情熱が伝わって感動した」とあります。TikTok Shopは2025年6月に日本上陸し、ライブ配信とEC購入がシームレスに統合された「ディスカバリーEコマース」として、衝動買いを促す効果があります。Z世代はSNS起点で購買する傾向が強く、ライブコマースは体験価値提供と信頼構築に有効です。

1-4-第3問

【設問】
B社が生成AIツールを活用してマーケティング業務を効率化した具体的施策と、その効果を120字以内で説明せよ。

【解答例】
ChatGPTで配信告知文やSNS投稿文を自動生成し少人数でも高頻度のコンテンツ発信を実現した。AI顧客データ分析で視聴者の嗜好を把握しパーソナライズメールを送信しリピート購入を促進した。作業時間を大幅短縮しマーケティング担当者が戦略立案に集中できるようになった。(119字)

【解答の根拠】
与件文に「生成AIツール(ChatGPT)を使って、配信告知文やSNS投稿文を自動生成」「AIによる顧客データ分析で、視聴者の嗜好や購買パターンを把握し、パーソナライズされたレコメンドメールを送信」と明記されています。2025年、マーケティング担当者の65%が生成AIでコンテンツを作成しており、時間短縮と生産性向上の両立が可能になっています。

1-4-第4問

【設問】
B社が万博期間中に実施する「万博×酒蔵見学ツアー」と「ECクーポン配布」施策の狙いを、顧客接点創出とリピート購入促進の観点から100字以内で述べよ。

【解答例】
酒蔵見学で万博来場者に体験価値を提供し商品への理解と愛着を深め顧客接点を創出する。ECクーポンで帰国後もオンライン購入を促しリピート顧客化する。体験とデジタルを融合させ長期的な顧客関係を構築する。(97字)

【解答の根拠】
与件文に「万博会場から直営店舗までのシャトルバスを運行し、酒蔵見学・試飲体験・ランチのセットツアーを提供」「ECサイトで使える割引クーポンを配布し、帰国後もリピート購入を促す」とあります。体験型観光は2025年のインバウンドトレンドであり、現地体験とECを組み合わせることで購買継続につながります。

1-4-第5問

【設問】
B社がInstagramとTikTokを使い分ける際の各SNSの役割を、80字以内で述べよ。

【解答例】
Instagramはブランドストーリーや製造工程を発信しファン化を図る。TikTokはライブ配信で衝動買いを促し潜在顧客を獲得する。両者を連携させ認知から購買まで一貫した導線を構築する。(89字)

【解答の根拠】
与件文に「Instagramではブランドストーリーや製造工程を発信してファン化を図り、TikTokでは衝動買いを促すライブ販売を展開する」と明記されています。Instagramは目的買いのEコマース、TikTokはディスカバリーEコマースに適しており、使い分けが重要です。

3.テーマ:地域特産品EC事業者のサブスクモデルと生成AI活用

3-1.テーマ概要と背景

業種: 地域特産品キュレーション型ECサイト運営
企業規模: 従業員約15名、年商2億円
立地: 首都圏(本社オフィス・物流拠点)

3-2.時事的背景との関連性

サブスクリプション(定期購入)ビジネスは、2025年に一層浸透しており、特に食品分野では「毎月届く地域特産品」「ご当地グルメセット」などのサービスが人気です。能登復興支援サブスクや県ジンプロジェクトなど、地域支援と消費を結びつけるモデルが注目されています。

地域ブランド戦略では、ストーリーテリング、地域の独自性活用、デジタルマーケティング強化、地域住民・事業者の連携が成功の鍵とされています。中小企業は単独では認知度向上が困難ですが、複数地域の特産品をキュレーションし、サブスク形式で提供することで顧客獲得が可能です。

生成AIのパーソナライズマーケティングも重要トレンドです。HubSpotの調査では、AIパーソナライズメールで開封率やクリック率が大幅改善し、コンバージョン率が82%増加した事例があります。AIによる顧客データ分析とレコメンドにより、一人ひとりのニーズに合わせた商品提案が可能です。

地方創生の文脈では、セカンドシティ観光が注目されており、地方都市の特産品を全国に発信する仕組みが求められています。

3-3.与件文(約1,800字)

C社の概要と沿革:

C社は、2018年に創業した地域特産品ECサイト運営会社である。代表取締役(38歳・女性)は、大手通販会社で10年間EC運営とマーケティングを経験した後、「地方の隠れた名産品を全国に届けたい」という想いで起業した。従業員は約15名、年商は2億円である。

C社のビジネスモデルは、全国の地域特産品生産者と提携し、厳選した商品を自社ECサイトで販売するキュレーション型である。取扱商品は、調味料、加工食品、お菓子、お酒など約300品目で、常時50社以上の生産者と提携している。C社の強みは、代表自身が全国の産地を訪問し、生産者の想いや商品背景を取材して発信する「ストーリーテリング型マーケティング」である。商品ページには生産者の写真やインタビュー記事が掲載され、顧客から「商品の背景がわかって共感できる」と好評である。

主要顧客層は、30~50代の食にこだわりのある女性で、ギフト需要や自宅用購入が多い。ECサイトの月間訪問者数は約5万人、会員数は約1万人である。

経営環境の変化と課題:

C社は順調に成長してきたが、近年いくつかの課題に直面している。第一に、顧客獲得コストの上昇である。SNS広告やGoogle広告の費用が年々高騰し、新規顧客獲得の費用対効果が悪化している。第二に、リピート率の低さである。初回購入後、2回目以降の購入につながる顧客が少なく、顧客生涯価値(LTV)が低い。第三に、季節や商品によって売上が変動し、安定した収益確保が困難である。

代表は、「単発購入モデルには限界がある。継続的に商品を届けるサブスクリプションモデルに転換すべきだ」と考え、2024年に新規事業として「地域特産品サブスク」の企画を開始した。

サブスクリプションモデルの立ち上げ:

2025年4月、C社は「日本全国味めぐりサブスク」サービスを正式にローンチした。毎月、全国の異なる地域から厳選した特産品セット(調味料2品、お菓子1品、加工食品1品の計4品)を会員に届ける仕組みである。月額4,980円で、初月は2,980円のキャンペーン価格を設定した。

サービスの特徴は以下の通り:①管理栄養士がお墨付きの安心安全な商品、②毎月異なる地域の特産品で飽きが来ない、③生産者のストーリーを記載した冊子を同梱、④会員限定のオンラインイベント(生産者との交流会)を月1回開催、⑤過去に届いた商品を単品購入できる会員専用ストア。

初月のキャンペーン広告をSNSとメルマガで展開したところ、200名の会員が申し込んだ。顧客の反応は良好で、「毎月届くのが楽しみ」「知らなかった地域の美味しいものに出会えた」といった声が寄せられた。

生成AIによるパーソナライズ戦略:

C社は、サブスク会員の継続率向上とLTV最大化のため、生成AIを活用したパーソナライズマーケティングを導入した。具体的には、AIツールを使って会員の購買履歴、商品レビュー、Webサイトの閲覧データを分析し、一人ひとりの嗜好を把握する。

例えば、「和菓子が好き」「辛い調味料を好む」「ギフト購入が多い」といった顧客の特徴をAIが自動で抽出し、それに基づいて以下の施策を実施する:①次月の配送商品に顧客の嗜好に合った商品を1品追加、②AIが自動生成したパーソナライズメールで「あなたにおすすめの商品」を紹介、③顧客の誕生月に特別な商品やメッセージを送付。

また、生成AIで商品紹介文やSNS投稿を自動生成し、マーケティングチームの作業を効率化した。代表は、「少人数の組織でも、AIを活用することで大手企業並みのマーケティングができる」と語る。

生産者ネットワークと地域連携:

C社のサブスク事業の成功には、全国の生産者とのネットワーク構築が不可欠である。代表は、これまでの産地訪問で築いた信頼関係を活かし、約100社の生産者とサブスク提携を結んだ。生産者にとっても、C社のサブスクは安定的な販路となり、Win-Winの関係が構築できている。

また、地方自治体とも連携し、地域振興の一環としてサブスク事業を推進している。例えば、ある県では、県が推奨する特産品をC社サブスクで全国発信し、認知度向上と販路拡大を図っている。こうした官民連携により、地域ブランド化と持続可能なビジネスモデルが実現している。

今後の展開と課題:

C社は、サブスク会員を1年後に1,000名、3年後に5,000名まで拡大する目標を掲げている。そのために、以下の施策を計画している:①インフルエンサーとのコラボによる認知拡大、②企業向けサブスク(福利厚生や贈答用)の開拓、③海外展開(訪日経験のある外国人向け越境EC)、④AIによる解約予測と継続率向上施策の自動化。

代表は、「サブスクは単なる販売モデルではなく、顧客と生産者をつなぐコミュニティだ。継続的な関係構築が何より重要だ」と考えている。

3-4.設問と解答例

3-4-第1問

【設問】
C社が従来の単発購入モデルで直面していた課題を、顧客獲得コストとリピート率の観点から100字以内で説明せよ。

【解答例】
広告費高騰により新規顧客獲得コストが上昇し費用対効果が悪化した。初回購入後のリピート率が低く顧客生涯価値が低いため安定収益確保が困難で、季節変動により売上が不安定だった。継続的な顧客関係構築ができていなかった。(103字)

【解答の根拠】
与件文に「SNS広告やGoogle広告の費用が年々高騰し、新規顧客獲得の費用対効果が悪化」「初回購入後、2回目以降の購入につながる顧客が少なく、顧客生涯価値(LTV)が低い」と明記されています。

3-4-第2問

【設問】
C社がサブスクリプションモデルに転換する戦略上の利点を、収益安定化と顧客関係構築の観点から150字以内で述べよ。

【解答例】
毎月定額の継続収入により売上の季節変動を平準化し安定収益を確保できる。継続的に商品を届けることで顧客との接点が増え信頼関係を深め長期的なロイヤリティを構築できる。顧客生涯価値が向上し新規獲得コストを回収しやすくなる。生産者には安定的な販路を提供しWin-Win関係を構築できる。会員限定イベントでコミュニティ形成し解約率を低減できる。(167字)

【解答の根拠】
サブスクリプションは継続課金モデルであり、収益予測が立てやすく安定経営につながります。与件文に「単発購入モデルには限界がある」「継続的に商品を届ける」「生産者にとっても、C社のサブスクは安定的な販路」とあります。

3-4-第3問

【設問】
C社が生成AIを活用してパーソナライズマーケティングを実施する具体的施策と効果を、120字以内で説明せよ。

【解答例】
AI顧客データ分析で購買履歴やレビューから嗜好を把握し次月配送商品に好みの商品を追加する。AIパーソナライズメールでおすすめ商品を紹介しリピート購入を促進する。誕生月に特別商品を送付し顧客満足度を高める。商品紹介文を自動生成し作業効率化する。(118字)

【解答の根拠】
与件文に「AIツールを使って会員の購買履歴、商品レビュー、Webサイトの閲覧データを分析」「次月の配送商品に顧客の嗜好に合った商品を1品追加」「AIが自動生成したパーソナライズメール」と明記されています。AIパーソナライズはコンバージョン率82%増の実績があります。

3-4-第4問

【設問】
C社が生産者とのネットワーク構築と地方自治体連携を重視する理由を、商品調達と地域ブランド化の観点から100字以内で述べよ。

【解答例】
生産者と信頼関係を築き厳選商品を安定調達できる。自治体連携で地域推奨特産品を全国発信し認知度向上と地域ブランド化に貢献する。官民連携で地方創生を推進し持続可能なビジネスモデルを実現する。(96字)

【解答の根拠】
与件文に「約100社の生産者とサブスク提携」「地方自治体とも連携し、地域振興の一環としてサブスク事業を推進」「官民連携により、地域ブランド化と持続可能なビジネスモデルが実現」とあります。地域ブランド戦略では官民連携が重要です。

3-4-第5問

【設問】
C社がサブスク会員の継続率向上のために実施すべき施策を、80字以内で述べよ。

【解答例】
会員限定イベントで生産者交流しコミュニティ形成する。AI解約予測で解約リスク顧客に特典提供する。定期的な満足度調査で改善する。新商品を優先案内し特別感を演出する。(82字)

【解答の根拠】
与件文に「会員限定のオンラインイベント(生産者との交流会)」「AIによる解約予測と継続率向上施策の自動化」とあります。サブスクビジネスでは継続率(チャーンレート)管理が最重要です。

4.テーマ:伝統菓子メーカーのインバウンド体験型販売とD2C展開

4-1.テーマ概要と背景

業種: 地方の伝統和菓子製造・販売業
企業規模: 従業員約40名、年商10億円
立地: 地方都市の観光地

4-2.時事的背景との関連性

2025年はインバウンド需要が完全回復し、訪日外国人は月間300万人を超えています。特に体験型観光が人気で、工場見学、手作り体験、食文化体験などが高い集客力を持っています。訪日客は「本物の日本文化」に触れたいというニーズが強く、地方の伝統産業が体験コンテンツを提供することで差別化できます。

D2C(Direct to Consumer)ビジネスモデルは、中間業者を介さず消費者に直接販売する手法で、ブランドの世界観を伝えやすく利益率が高いメリットがあります。卸売依存から脱却し、自社ECやSNSで直接顧客とつながることで、データ収集やファン育成が可能になります。

Z世代・若年層向けマーケティングも重要です。伝統和菓子は高齢者向けのイメージが強く、若年層への訴求が課題です。SNS映え、ストーリー性、サステナビリティといった要素を取り入れることで、若年層の関心を引くことができます。

多言語対応と越境ECも2025年のトレンドです。訪日経験者が帰国後もECで購入できる仕組みを整備することで、継続的な売上が見込めます。

4-3.与件文(約1,800字)

D社の概要と沿革:

D社は、地方都市の観光地に位置する創業90年の和菓子製造業者である。従業員は約40名、年商は10億円で、地元の伝統和菓子「Y餅」を主力商品としている。Y餅は、地元産の餅米と小豆を使った素朴な和菓子で、地元民に長年愛されてきた。

現社長(58歳・男性)は三代目で、2000年に社長に就任した。主要販路は、地元の土産物店と百貨店への卸売が中心で、売上の8割を占める。残り2割は、工場併設の直営店舗での小売である。直営店舗は年間約3万人が来店し、うち約3割が訪日外国人である。

D社は、伝統的な製法と味を守ることを重視してきたが、近年は売上が横ばいで、新規顧客開拓が課題となっている。

経営環境の変化と課題:

D社を取り巻く環境は大きく変化している。第一に、卸売先の減少である。百貨店の売上減少や土産物店の閉店により、卸売売上が減少している。第二に、若年層の和菓子離れである。和菓子は高齢者向けというイメージが強く、20~30代の購入が少ない。第三に、インバウンド需要の変化である。コロナ前は訪日外国人が直営店舗で土産購入していたが、コロナで途絶えた。2024年以降回復しているが、D社は多言語対応やキャッシュレス決済が不十分で、十分に対応できていない。

現社長は、「卸売依存では将来が不安だ。自社で直接顧客とつながる販路を作らなければ」と考えていた。

後継者の体験型施設構想:

現社長の長男(30歳)が2023年にD社に入社し、営業企画部長に就任した。長男は大学で観光学を専攻し、大手テーマパーク運営会社で5年間勤務し、体験型施設の企画・運営を経験していた。長男は、「工場を体験型観光施設に改装し、インバウンド客を呼び込むべきだ」と提案した。

2024年、D社は工場の一部を改装し、「Y餅ミュージアム&体験工房」をオープンした。施設内容は以下の通り:①Y餅の歴史と製造工程を紹介する展示コーナー、②職人が実演する和菓子作りの見学ルート、③訪問客が自分でY餅を作る体験工房、④出来立てのY餅を食べられるカフェスペース、⑤オリジナル商品や限定商品を販売するショップ。

施設は日英中韓の4ヶ国語に対応し、音声ガイドアプリも用意した。また、キャッシュレス決済を完備し、外国人客がスムーズに買い物できるようにした。

オープン初年度、約2万人が来場し、うち約半数が訪日外国人だった。顧客の反応は非常に良く、「和菓子作りが楽しかった」「日本の伝統文化を体験できて感動した」といった声が寄せられた。SNSでの口コミも広がり、InstagramやTikTokで「#Y餅体験」のハッシュタグ投稿が増えた。

D2CとECの強化:

長男は、体験施設で得た顧客データを活かし、D2CとECを強化する戦略を立案した。具体的には、①体験施設来場者にQRコードで自社ECサイトに誘導し、会員登録を促す、②ECサイトで体験施設限定商品や新商品を販売、③SNS(Instagram、TikTok)で和菓子作りの動画や職人のストーリーを発信、④外国人向け越境ECサイトを開設し、帰国後も購入できる仕組みを構築、⑤生成AIで多言語の商品説明文や広告文を自動生成。

2025年、D社は自社ECサイトを刷新し、UI/UXを改善した。また、訪日外国人向けに英語・中国語のECサイトを開設し、国際配送に対応した。体験施設で配布するクーポンにECサイトのQRコードを印刷し、来場者の約3割がEC会員登録した。

ECサイトでは、「職人手作りY餅詰め合わせ」「季節限定和菓子セット」などを販売し、月商は約500万円に達した。特に外国人客からの注文が多く、帰国後もリピート購入する顧客が増えている。

若年層向け新商品開発:

長男は、若年層開拓のため、伝統的なY餅とは異なる新商品を開発した。具体的には、「フルーツ大福」「抹茶ティラミス和菓子」「カラフル最中」など、見た目が華やかでSNS映えする商品である。これらは、体験施設のカフェで提供され、若い女性客に人気となった。

また、パッケージデザインも刷新し、モダンでおしゃれなデザインにした。若手デザイナーと協力し、Z世代に受け入れられるビジュアルを追求した。新商品は、InstagramやTikTokで積極的に発信し、インフルエンサーとコラボして認知拡大を図った。

今後の展望:

D社は、体験型施設とD2Cを軸に、①年間来場者を5万人に拡大、②EC売上を年商の3割(3億円)まで引き上げ、③海外展開(アジア・欧米の富裕層向け越境EC)、④若年層向けブランドの確立、を目標に掲げている。

長男は、「伝統を守るだけでは生き残れない。伝統を活かしながら、新しい価値を創造することが重要だ」と語る。現社長も、「長男の発想と実行力で、D社は新しいステージに進んでいる」と後継者への期待を寄せている。

4-4.設問と解答例

4-4-第1問

【設問】
D社が卸売依存の販路で直面していた課題を、環境変化と収益性の観点から100字以内で説明せよ。

【解答例】
百貨店売上減少と土産物店閉店により卸売先が減少し売上が減った。卸売では最終消費者との接点がなく顧客データを得られず新規顧客開拓ができない。中間マージンにより利益率が低く価格決定権がなかった。(95字)

【解答の根拠】
与件文に「百貨店の売上減少や土産物店の閉店により、卸売売上が減少」「卸売依存では将来が不安だ。自社で直接顧客とつながる販路を作らなければ」とあります。卸売では顧客データ取得やブランディングが困難です。

4-4-第2問

【設問】
D社が体験型施設「Y餅ミュージアム&体験工房」を開設する戦略上の狙いを、顧客接点創出とブランド価値向上の観点から150字以内で述べよ。

【解答例】
工場見学と手作り体験で訪日外国人に日本の伝統文化を体感させ商品への理解と愛着を深める。体験を通じて顧客と直接接点を持ちブランドストーリーを伝えブランド価値を向上させる。SNS投稿を促し口コミで認知拡大する。カフェとショップで購買機会を創出し収益を得る。多言語対応で外国人客の満足度を高めリピート購入につなげる。(158字)

【解答の根拠】
与件文に「工場を体験型観光施設に改装し、インバウンド客を呼び込む」「和菓子作りが楽しかった」「日本の伝統文化を体験できて感動した」「SNSでの口コミも広がり」とあります。体験型観光は2025年のトレンドです。

4-4-第3問

【設問】
D社が体験施設来場者をECサイトに誘導しD2C販売を強化する施策の要点を、120字以内で説明せよ。

【解答例】
QRコードでECサイトに誘導し会員登録を促す。体験施設限定商品や新商品をECで販売しリピート購入を促進する。外国人向け越境ECで帰国後も購入可能にする。SNSで職人ストーリーを発信しブランドへの共感を醸成する。体験とデジタルを融合し長期的顧客関係を構築する。(130字)

【解答の根拠】
与件文に「体験施設来場者にQRコードで自社ECサイトに誘導し、会員登録を促す」「外国人向け越境ECサイトを開設し、帰国後も購入できる仕組み」とあります。体験とECの融合がD2C戦略の鍵です。

4-4-第4問

【設問】
D社が若年層開拓のために実施した新商品開発とプロモーション施策の要点を、100字以内で述べよ。

【解答例】
フルーツ大福や抹茶ティラミス和菓子などSNS映えする華やかな商品を開発した。モダンなパッケージで若年層に訴求した。InstagramやTikTokで積極的に発信しインフルエンサーとコラボし認知拡大した。(95字)

【解答の根拠】
与件文に「見た目が華やかでSNS映えする商品」「パッケージデザインも刷新し、モダンでおしゃれなデザインに」「InstagramやTikTokで積極的に発信し、インフルエンサーとコラボ」とあります。Z世代はSNS映えと共感を重視します。

4-4-第5問

【設問】
D社が多言語対応とキャッシュレス決済を整備する理由を、80字以内で述べよ。

【解答例】
訪日外国人が言語やサービスの壁なく快適に体験・購買できるようにし満足度を高める。帰国後も越境ECで購入しやすくしリピート顧客化する。インバウンド需要を最大化する。(82字)

【解答の根拠】
与件文に「日英中韓の4ヶ国語に対応」「キャッシュレス決済を完備し、外国人客がスムーズに買い物できる」とあります。多言語対応はインバウンドマーケティングの基本です。

5.総括

2025年度の事例IIでは、大阪万博ライブコマース(TikTok Shop)サブスクリプション生成AI活用D2C体験型販売という2025年特有のマーケティングトレンドを反映しつつ、EC・デジタル販売強化新規顧客開拓という一貫したテーマが継続すると予測されます。3つのテーマはいずれも、デジタル技術を活用した顧客接点創出と、ストーリーテリング・体験価値によるブランド構築を実践する内容です。

テーマ1(酒造メーカー)は、万博とライブコマースを活用した若年層・インバウンド開拓を問います。テーマ2(特産品EC)は、サブスクと生成AIによる継続課金モデルとパーソナライズを問います。**テーマ3(和菓子メーカー)は、体験型施設とD2Cによる卸売依存脱却を問います。

受験生の皆様は、2025年のマーケティングトレンド(ライブコマース、生成AI、サブスク、Z世代購買行動、インバウンド体験型、地域ブランド戦略)を整理し、事例IIの本質である「顧客セグメント」「ターゲティング」「ポジショニング」「4P」の視点で解答できるよう準備されることを推奨します。本予測が皆様の合格の一助となれば幸いです。

               榎本雄介
               

中小企業診断士 Eno(登録番号:429629)

中小企業診断士です。金融機関で働きながら、独学で1次・2次共に1回、1年で2024年度に合格しました。
実務従事を経て、2025年8月より中小企業診断士として活動しています。
独学で1次・2次試験を突破するためのノウハウを発信しています。皆様のご参考になれば幸いです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました