3. 原価計算・原価管理
3-1.はじめに
中小企業の経営改善や利益管理には、原価計算と原価管理の理解が不可欠です。
原価とは製品やサービスの提供にかかる費用のことで、適切な原価把握は価格設定や利益管理、経営判断の基礎となります。ここでは原価の基本概念、計算手法、管理方法を体系的に解説します。
3-2. 原価の基本概念
3-2-1.原価の定義
原価とは、製品やサービスを作り出すために必要な資源の消費価値を金額で表したものです。
3-2-2. 原価の分類
| 分類 | 内容 | 具体例 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 固定費 | 生産量にかかわらず一定の費用 | 家賃、減価償却費、管理部門人件費 | 生産量に比例しない。コストコントロールが重要。 |
| 変動費 | 生産量に比例して変動する費用 | 材料費、直接労務費 | 生産量に連動。製品1個あたりの単価に影響。 |
| 半変動費 | 固定費と変動費の中間的性質 | 電気代(一部基本料金+使用量料金) | コスト分析で分離が必要。 |
3-3.原価計算の方法
3-3-1.全部原価計算(吸収原価計算)
- 概要
製品の原価に固定費と変動費の両方を含めて計算する方法。損益計算書は全部原価ベースで作成されることが多い。 - メリット
製品の総原価を把握できる。会計上の利益計算に適している。 - デメリット
固定費が製品数で割られるため、生産量の変動によって利益が大きく変動しやすい。
3-3-2.直接原価計算(変動原価計算)
3-4.損益分岐点とCVP分析の関係
直接原価計算は損益分岐点分析やCVP分析の基礎となります。
- 損益分岐点売上高(BEP)計算式
= 固定費 ÷ 限界利益率
(← この形だけ覚えればOK!)
※ 限界利益率の公式 : 限界利益率 = 1 -(変動費 ÷ 売上高) - 安全余裕率
実際の売上高が損益分岐点をどれだけ上回っているかの割合。 - 利益目標売上高
目標利益を考慮した売上高の計算。
3-5.原価管理のポイント
- 標準原価管理
標準原価(計画的な原価)と実際原価を比較し、差異分析を行うことでコスト管理を行う。 - 差異分析の種類
- 材料費差異(価格差異、数量差異)
- 労務費差異(賃率差異、能率差異)
- 経費差異(予算差異、操業度差異)
- 改善活動への活用
差異の原因分析を行い、無駄の排除や効率化を図る。
3-6. 試験対策ポイント
- 固定費・変動費の定義と特徴を明確に区別できること。
- 全部原価計算と直接原価計算の違いを理解し、使い分けができること。
- 損益分岐点計算や安全余裕率の算出問題を確実に解けること。
- 標準原価管理の差異分析の基本的な考え方を押さえること。
3-7. まとめ
原価計算・原価管理は中小企業の利益確保と効率的経営の鍵であり、正確な原価把握が意思決定の土台となります。試験では基礎理論の理解と計算問題の両方が問われるため、体系的な学習と演習を通じて確実に習得しましょう。
4. 損益分岐点分析・CVP分析
4-1.はじめに
損益分岐点分析(Break-Even Point Analysis)とCVP分析(Cost-Volume-Profit Analysis、費用・量・利益分析)は、企業の利益構造を理解し、経営判断や戦略立案に役立てるための基本的かつ強力な手法です。
中小企業診断士試験においても頻出テーマであり、計算力と理論理解が求められます。
4-2. 損益分岐点分析の基本概念
4-2-1.損益分岐点とは?
損益分岐点とは、売上高と費用が等しくなり、利益がゼロになる売上高のことを指します。このポイントを超えれば利益が生まれ、下回れば赤字となります。
4-2-2.損益分岐点の構成要素
- 固定費(Fixed Costs)
生産量や売上高に関係なく発生する費用。例:家賃、減価償却費、人件費の一部。 - 変動費(Variable Costs)
生産量や売上高に比例して増減する費用。例:材料費、外注加工費。 - 売上高(Sales)
商品やサービスの販売による収益。 - 貢献利益(Contribution Margin)
売上高から変動費を差し引いた残り。固定費の回収や利益の源泉。
4-3.損益分岐点の計算
4-3-1.損益分岐点売上高の公式
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 貢献利益率
● 貢献利益率の公式
貢献利益率 = 貢献利益 ÷ 売上高
貢献利益率 = 1 -(変動費 ÷ 売上高)
4-3-2.損益分岐点数量の公式
損益分岐点数量 = 固定費 ÷ 単位あたりの貢献利益
4-3-3.具体例
例:
固定費=200万円
売上高=500万円
変動費=300万円
貢献利益=500万円 − 300万円=200万円
貢献利益率=200万円 ÷ 500万円=0.4(40%)
損益分岐点売上高=200万円 ÷ 0.4=500万円
→この例では売上500万円で利益ゼロ、500万円を超えれば黒字。
4-4.安全余裕率(Margin of Safety)
安全余裕率とは、実際の売上高が損益分岐点売上高をどれだけ超えているかを示す指標です。
経営の安全度合いを表し、数値が大きいほど経営が安定しています。
安全余裕率 =(実際の売上高 - 損益分岐点売上高)÷ 実際の売上高 × 100%
4-5.CVP分析(費用・量・利益分析)
CVP分析は売上量・価格・費用の変化が利益に与える影響を分析する手法です。
以下の関係式が基本となります。
利益 = 貢献利益(売上高 - 変動費) - 固定費
4-6.CVP分析の活用例
- 価格戦略の検討
販売価格を変更した場合の損益分岐点や利益への影響を分析。 - 生産・販売量の目標設定
目標利益を達成するために必要な販売量を算出。 - コスト構造の改善効果の評価
固定費や変動費の削減が利益に与える影響を定量的に把握。
4-7.利益目標売上高の計算
目標利益(例えば利益100万円)を設定した場合、
目標売上高=(固定費 + 目標利益)÷ 貢献利益率
4-8.グラフによる視覚化(損益分岐点図)
損益分岐点図は、売上高・費用・利益の関係をグラフで表し、損益分岐点を視覚的に確認できます。

4-9.試験対策ポイント
- 損益分岐点の意味・計算式・考え方を完全に理解すること。
- 貢献利益と貢献利益率の計算を正確に行えること。
- 安全余裕率や目標利益売上高の計算問題に慣れること。
- 損益分岐点図の読み取り問題や描画問題にも対応できるようにする。
4-10.まとめ
損益分岐点分析とCVP分析は、企業経営の意思決定や戦略設計に不可欠な分析手法です。
売上高・費用構造・利益の関係を正しく理解し、実際の経営課題に活かせる力を養うことが重要です。中小企業診断士試験の「財務・会計」分野での頻出テーマでもあり、計算力と理論をバランスよく習得しましょう。


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